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前科

バカラ賭博の必勝法。

それは単純に2人一組に成り、店から貰えるサービスチップを、お互いが逆に張り合う事で、

やり取りし換金出来るチップに交換すると言う方法。

簡単に言えば、2分の1のギャンブルなのでペアに成った二人が毎回逆に掛ければ一方が負けても、

片方は負けた金額分だけ勝ち分として残る。だから必然的に負け無いと言うもの。

しかし相手は闇の世界で行われている非合法ギャンブルで利益を出してるつわもの…

もしペアがばれた場合にどうなるんだろうか?不安は付きまとったが、どうしても勝ちたい

と言う強い気持ちが抑えきれずに実行してしまう。

当時のサービスチップの標準は10万円分買えば2万円分サービスチップを付けてくれる店が多かった。

中にはサービスタイムを狙えば5万サービスなんて凄い店も存在していた。毎日同じ店で、

それをすれば確実にバレルのは判って居たので、店ごとの収支表を付け一日、一軒に付き1~2万を目安に

5~6件をペアで回り日当5万円を目安に勝ったり負けたりを演出しながら『サービスチップのハイエナ活動』に勤しんでいた。

これが異常なまでウマく行きあっと言う間に100万円近く貯まってしまう。

当時はカジノバーが流行りのピークを迎えて居た頃で、仕事場のネオン街には200軒近くのカジノバーが存在していた。

しかし、目立つとマズイ裏の世界。当然、警察の取締りが強化され始めた時期でも有った。

そんな最中ヤヴァイと判って居ても美味しすぎて中々足を洗えない必勝法。いつか捕まるかも知れない。

そんな不安が付きまといながらも連日サービスチップ狙いを実行する日々しかし、ついに事件は起こってしまう。

その日は雨が強く降っていた為、近場の店で済まそうと言う事になり、暫く私の勤めて居たカラオケ店で雨宿り…

雨が弱く成るのを待って出発する事にした。

そして忘れもしない夜8時20分に店を出て、その数分後カジノ店の前に到着した。

何時も開いてる筈の扉が閉められて居たのを違和感に感じたが、構わず扉を開けて進入しようとしたその瞬間!!

突如、陰から出てきた男に扉を開けた手を捕まれる。そして、その男が私に一言『け・い・さ・つ・や』

お前はこの店に何しに来た?と問いかけられる。

『あっ!あのぅ~…え~とですねぇ~実はタバコを買いに来まして♪』

私服警官『チョット今取り込み中やから、帰ってくれるか』

瞬間的に自分たちはガサイレを奇跡的にも回避できたと気づいた。

『判りました』と素直に答え

少し離れた所で中の様子を伺っていると、数分後けたたましいサイレンとパトライトをグルグル

高速回転させながら数台のパトカーが店の前に横付けされる。

crown05.gif


店内に居た客達は、うな垂れる様に警察官に両脇を抱えられパトカーに乗せられ、

けたたましいサイレンと共に夜のネオン街へ消えて行った。ヤヴァかった!後、数分早く店内に入ってれば間違いなくアウト!!

一生消えない前科一犯になる所だったのかなぁ~?と考えると足が震えたと同時に自分の持っている天運に感謝した。

その日以降、連日通って居たバカラ賭博と必勝法にはカジノバー摘発事件を境に手を出さなくなる。

しかし刺激に満ち溢れた生活から一変、刺激の無い生活は退屈で仕方なかった。

時折訪れる麻薬の中毒症状にも似た、興奮を味わいたい!と言う強い衝動に襲われるが、

逮捕を恐れるが故に躊躇いの日々が続いた。


【続く】

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